薪が盗まれた!? — いいえ、乾燥収縮です

昨日、T さんから電話で聞かれたことなのですが、生の状態で薪を売るときに、どのように考えれば、より誠実に取引ができるのか、ということを話しました。

その内容を備忘録も兼ねて書いておこうと思います。

薪の取引は、体積と重量のどちらか、またはその両方で行うのが一般的だと思いますが、未乾燥の場合、乾燥の具合により重量はかなりの変化があるため、伐採時期(状況)や樹種など、原木の状態が均一でないなら、重量で行うことはかなりの誤差があり不正確と思います。

そうなると、必然的に体積(容積)で行うことになるわけです。

自分は、薪を買う人は薪ストーブで燃やすために買っているのだから、乾燥した時にどれだけの薪になるか、ということを基本として価格を決定すべきだし、そのことの根拠を示すべきだと考えています。

とある業者さんは、生薪 1kg 30 円、乾燥薪 1kg 40 円、というような売り方をしていました。

葉枯らし乾燥した原木であっても、乾燥後は 1/3 程度、重量が減ってしまいます。
つまり、目方は 2/3 になるのです。

30 円で買ったものが、2/3 になるということは、乾燥後の価格に換算すると、3/2 をかければいいのですから、45 円/kg ということになりますね。

なんと、1 年前にお金を払い、1/3 の水の重量の運賃まで払い、カビたり虫に食われたりするリスクも背負い、乾燥の手間まで掛けて、乾燥品よりも高いものを買っていることになりますから、損得をいえば、大損といえる取引です。
まあ、手元に薪がある、という安心感はあるのでしょうが。

次に、体積での取引を考えて見ます。

例えば、今、ウッドバッグにいっぱいの薪があるとして、樹種はクヌギ・コナラとします。

含水率はわからないとして、ベルトコンベアーで排出したものを単に落として充填しているとしましょう。
ウッドバッグのサイズは、概ねですが、0.9m x 0.93m x 1.6m 程度です。

さて、牛乳パックの話をしましょうか。

牛乳会社にこんなページがあるんですよ。

牛乳パックの3辺を掛け合わせても1Lにならないのですが、ちゃんと1L入っているのですか?

ちょっと考えればすぐに分かりそうですが、容器に移して計量するとか、自分で確認してからクレームすれば、恥をかかずに済んだものでしょうに。

でも、FAQ でこんなページがあるほどに、問い合わせがある、ということでしょうね。

何がいいたいのかというと、ウッドバッグも同じで、内容物の体積は、3 辺の積ではない、それよりも有利な数値、ということです。

つまり、1.34m3 よりは確実に多くなるわけです。

実際、

One Woodbag needs storage space of 120x120cm.

と記載されていますが、(90cm + 93cm) x 2 / π = 116.5cm であることからも、ほぼ真円に近い形状になり、かつネットが膨らむ、ということが分かります。

90cm x 93cm の矩形(0.84m2)と、直径 120cm の円(1.13m2)とでは、30% 以上面積が違いますから、容積は、5% よりも多く増えそうです。

薪はがさつに放り込んだ場合、綺麗に積んだ場合のおよそ 1.4 倍になるといわれています。
また、完全に隙間を除いた場合の 2 倍になるといわれています。

過去にも書きました が、POSCH Leibnitz の薪製造機のカタログに次のように書かれています。

Conversion table
1 solid cubic metre = approx. 1.4 cubic metres
1 solid cubic metre = approx. 2.0 – 2.4 loose cubic metres
1 loose cubic metre = approx. 0.7 cubic metres

がさつに入れる場合、容器のサイズに対して、薪の長さが長くなれば、極端な話をすれば、1辺が 1m の立方体に 1.1m の薪を詰めるケースをイメージすればよりわかりやすいと思いますが、薪のサイズが大きくなればなるほど、隙間が発生しやすくなる傾向が顕著になりますが、今回は、短い薪なので、そういうケースは考えないこととします。

そうすると、ウッドバッグの中には、0.7m3 の生薪が詰まっていることになります。

気乾比重は、樹種がクヌギ・コナラなら 0.8 程度なので、0.56t の乾燥薪が得られることになりそうです。

というわけで、お値段は、560kg x 40 円 = って、ちょっと待ったぁ!

すみません、振りが長くて。ここからが本題です。

薪棚に薪を積んだら積んだら、ヘタすると倒れますよね。
日当たりの良い南側に傾いて。

なんでかというと、乾燥すると、収縮するからです。

つまり、乾燥すると、目方だけではなくて、体積も減るわけで、気乾比重は、その乾燥後の体積での比重なので、乾燥後の体積に換算してやらないといけません!

そうしないと、お客さんは、買った時はウッドバッグにいっぱい入ってたのに、置いておいたら量が少し減っている、泥棒!!とか勘違いしてしまいかねません。

木材、というか、薪ですが、太さ方向に対しては大きく収縮しますが、長さ方向に対してはほぼ収縮しない性質を持っています。

ログハウスに住んでいる人なら、必ず知っていることですが、セトリングといってログハウスは壁が縮んで家が低くなっていきます。

このメカニズムは、乾燥収縮によるものと、それ以外の原因によるものと、複合した要素があると思われますが、生木を加工したハンドカットログハウスの場合で、10cm 程度収縮するといわれています。

一般的なログ壁の高さが 2.5m 程度であることを考えますと、4% 程直径が細くなることを意味します。

経験的には、自分は最大で 5% 収縮すると考えています。

ログハウスの場合は、荷重がかかっている、という事情があり、マシンカット(乾燥済みの木材)ログハウスでも、ハンドカットの半分程度、概ね 4cm 程度沈むこといわれています。

まあ、収縮の理由の半分が乾燥によるものだとすれば、98% ですが、不利な 95% を採用して考えて見ます。

直径が 5% 細くなる、ということは、断面積は、0.9025 倍になることを意味します。

長さ方向に対してはほぼ縮みませんが、全く縮まないことはないので、乾燥後は、0.9 倍に、つまり、体積は最大で 1 割程度目減りする可能性がある、ということです。

実際には、その半分の 5% くらいでしょう。

以上を踏まえると、ウッドバッグ 1 袋のクヌギ・コナラ薪は、560kg ではなく、最悪は、その 90% の概ね 500kg と考えられます。

乾燥収縮により、製造時は袋の口元まで充填してあるものが目減りますし、また、配達する場合、輸送の振動により、より隙間が減るため、場合によっては 2 割くらい抜き取られたようなイメージを持たれるかもしれませんが、ちゃんと誠実に作っていますので、その点は安心していただければと思います。

但し、自然のもののため、原木の状況や、薪の形にばらつきがありますから、袋ごとに、現実問題 ± 5% くらい、つまり、1 割程度の重量差が生産した時点であります。

うちは、乾燥後の薪は、取りに来て頂いた場合で、1kg あたり 40 円なのですが、ウッドバッグ入りの生薪は、運賃込みで乾燥後約 500kg 程度が 20,000 円で販売しているわけです。

実際には、90% にも目減りはしないと思いますし、ウッドバッグの容積も少なめに積算しているし、運賃も通常 1kg あたり 10 円程度はかかるものですから、乾燥後に計量しているものよりも、有利になっていると思います。

場所に余裕が有る方には、乾燥の手間分、お得になっている、ウッドバッグ入りをおすすめしたいと思います。

ウッドバッグ入りの生薪は、原木の入荷がある梅雨入り前までの期間限定販売となっています。

また、松山市近郊の方に限りますが、薪をお買い上げの方に薪割機(電動)の無料貸出しも行っておりますので、こちらもお気軽にお問い合わせください。