浸透桝の設計について勉強しています。
施設について設計する際に、「飽和透水係数」という数値が必要になるのですが、関東ローム層の場合、どの程度の数値になるのか、よくわからなかったので、調べてみました。
そうしたところ、東京都雨水貯留・浸透施設技術指針(PDF) の P.31 で、
飽和透水係数は東京都浸透能力マップに記載される飽和透水係数を利用する。
という記載があり、P.39 および、P.40 の東京都浸透能力マップを見たところ、適した地形の場合、飽和透水係数として 0.14 m/hr が明示されていました。
東京都台地で採用する飽和透水係数と浸透能力マップ
東京都台地の透水層はローム層であるので、東京都台地の飽和透水係数は、関東ロー ムの飽和透水係数の平均値(2~4)×10-5m/s(0.072~0.144m/hr)、旧技術指針の飽和 透水係数(0.112~0.208m/hr)より、4×10-5m/s(0.144m/hr≒0.14m/hr)が採用できる と考えられる。(表 3.1.4)なお、飽和透水係数については、本指針を運用していく中で 資料の蓄積を図り、必要な精度が確保されれば飽和透水係数を更新していくことも考えている。
まだ、屋根の面積などは確定していませんが、仮に 60m2として計算してみたいと思います。
この時雨水浸透桝は、右図が 4 箇所、として考えます。
まず対策雨水量 Q1 を求めます。
流出係数 C :0.9 (屋根)
対策降雨強度 I : 50mm/hr
屋根面積 A : 60m2
次に設置施設の基準浸透量 Qf を求めます。
飽和透水係数 K0 : 0.14m/hr
設置施設の比浸透量 Kf : 5.82m2
設置施設の単位設計浸透量 Q を求めます。
各種影響係数 α : 0.81
単位空隙貯留量 q を求めます。
ます本体径 d : 300mm = 0.3m
ます本体内の水深 h1 : 400mm = 0.4m
施設幅 W : 600mm = 0.6m
砕石部の高さ h2 : 700mm = 0.7m
砕石空隙率 S : 35% = 0.35
一施設あたりの設計処理量 Qa を求めます。
4 ヵ所で処理するので、
∴ 対策雨水量を上回るので、設置可能。
とはいえ、ギリギリの数字ですので、トレンチを設置するなりの対策を講じないと、設計時にこういう数字なので、経年で詰まったりして強く降ると簡単に溢れかねません。
いずれにせよ、砕石の隙間などに貯留できる量は、計算結果を見ても分かる通り極めて限定的であり、飽和透水係数 K0 は固定なので、設置施設の能力は、基準浸透量 Qf に大きく依存していることは明らかです。
Kf は、(桝だけではなく周りの砕石部分も含めて)幅が 1m 以下の施設の場合、幅を W, 高さを H とした場合、
となります。
仮に幅 W を現状と同じ 600mm として、高さ H を 700mm から 1,000mm まで変化させた時にどうなるか、Grapher.app で描画してみました。
y 軸が Kf で x 軸は深さです。
例えば、幅を 1m にすれば、グラフでは赤いラインとなるわけですが、Kf が 6 → 9 程度に 1.5 倍向上することがわかります。
さらに深さを 1m にすれば、12 程度に 2 倍向上することがわかります。
屋根の面積に応じて、浸透桝の幅や深さを見直すこと、つまり、基準浸透量 Qf を適切にする必要がありそうです。
とはいえ、それでも 1m x 1m に大型化しても、2 倍程度にしか向上しないわけで、トレンチも併用して、浸透させるエリアを拡大しないと、かなりの確率でオーバーフローしそうです。
ちなみに、市役所から指示されたサイズは、W 800mm, H 850mm でした。
桝本体はコンクリート製で 300mm — 500mm 角の指定で、これが 4 箇所です。
桝本体は樹脂製(丸)でも良いということですが、サイズが小さくなると、単位空隙貯留量 q が減少するんですが、おそらく桝の価格よりも砕石等の価格のほうが安いと思われるので、W や H を大きく取るほうが安上がりかなと思います。