薪割り機は自作などするもんじゃない!?

昨日は薪ストーブの配達に出かけたんですが、その時、代行を依頼してくださったお客さんと小一時間立ち話をして、薪割り機の話になりました。

「自作している人も居ますよね?」ということからはじまり薪割り機の自作が話題になったんですが、自分の答えとしては、別に薪割り機を扱っているからそう答えたわけではないのですが、「自作などするもんじゃない」というものです。

その理由を整理して、再度書きたいと思います。

再度、というのは、薪割り機の話は過去書いてきているのですが、ここを見てくださる方がすべての過去記事を読んでいるわけではないと思いますし、このところ、薪割り機のことをろくに書いていないので、少々整理をしておきたいとも思います。

まず、薪割り機には色々タイプがありますが、今回書くのは、「油圧」で動く薪割り機のことです。

油圧で動くタイプの薪割り機は、主に 4 つの部品で構成されています。

  • シリンダ
  • コントロールバルブ
  • 油圧ポンプ
  • エンジン(モーター)

上記、4 つの部品を ブレイブ社の縦横兼用 薪割り機 VH1724GC を例に取ってみていきましょう。

まずはシリンダです。シリンダは高圧の油で伸縮する部品です。

シリンダには、「単動」と呼ばれる押すだけ(あるいは引くだけ)しかできないものと、「複動」と呼ばれる押すことも引くこともできるものとがあります。
殆どの薪割り機は、複動シリンダを使っていますが、中には単動のものもあります。

単動シリンダとは、上図のように、作動油の出入口がシリンダの一方にしかなく、シリンダは圧油で伸ばし、縮める時には自重又はスプリングの力等、外部からの力を必要とするものです。

身近な例では、いわゆる だるまジャッキ(ボトルジャッキ) が単動シリンダの最たるものです。
だるまジャッキは、レバーを操作して高圧の油を送ることにより、重たい自動車等を持ち上げ(=シリンダを伸ばす)ますが、下げるときはその重量で押し下げられるため、圧力のかかっている油をバルブを緩めて徐々に抜くことで下降させます。つまり、下げる(=シリンダを縮める)ために必要になる圧力を外部から得る構造になっていて、それ自身は、伸びることはできても、縮まることができないのです。
単一の動きしかできないので、単動シリンダといいます。

だるまジャッキを使用した手動の薪割り機です。
動画をよく観察すると、バルブを回しているのが確認できると思いますが、その時、ジャッキが縮むのは、バネが仕込んであるためです。
レバーが 2 本ありますが、一つは圧力が低いもののたくさん油が送れるもの(=動きは早いが力が弱い)、もう一つは圧力が高いものの少量の油しか送れない(=動きは遅いが力は強い)ものです。
まずたくさん油が送れるものを操作してウエッジ(くさび)部分に薪割りしたい玉が当たるまで進め、その後、力が必要なタイミングではもう一つのレバーを使用する、というのが使い方になります。

それでは、VH1724GC を見てみましょう。
24 TON と書いてあるチューブ状のものがシリンダですが、複動シリンダです。

リアルな図ですが、各部の名称の説明も兼ねて引用します。

構造ですが、上図のように、シリンダの両側に作動油の出入口があり、コントロールバルブによって圧油の流れる方向を変えて伸縮させることができます。

シリンダを伸ばす時(あるいは縮める時)は、コントロールバルブにより、右(縮めるときは左)の部屋に油を送ります。
シリンダチューブの内径・ピストンの直径のことをボアといいます。
また、伸縮できる量のことをストロークといいます。

注目して欲しいのですが、右の部屋は、送り込まれた油の圧力を受ける面積は、シリンダチューブの内側の面積=ピストンの面積となります。この面積が大きくなると、より大きな力を受けることになりますので、力の強いシリンダ、ということになります。

つまり。。。

面積 x 圧力 = 力(トン数)

という計算が成り立つわけです。
これこそが、油圧機械の根幹をなす理屈=パスカルの原理なので、まずは、シリンダが太い=力が強い、ということを覚えておいてください。

実際のトン数の計算方法などを含めてもう少しディープな話は、薪割機の話 — 油圧シリンダ編 に書いてありますので、より詳しく、という方はチェックしてみてください。

とまあ、ここまでの説明で、シリンダの伸縮には、圧油が必要であり、その方向を制御するための方向制御弁、すなわちコントロールバルブが必要だ、ということがお分かりいただけたと思います。

その圧油を生み出すのが油圧ポンプで、油圧ポンプを駆動するのがエンジンであったり、モータであったりするわけです。

まずは、方向制御弁・コントロールバルブの説明をします。

コントロールバルブですが、写真のような部品で、方向を制御する他のレバーがあり、レバーを倒す向きにより、シリンダが伸縮する構造です。

VH1724GC でも、手でレバーを操作していますが、シリンダに直接マウントされているのが見て取れると思います。

バルブには、圧油がポンプから送り込まれる in port(P)、それとタンクに戻す out port(T)が有り、シリンダを伸縮させるための work ports (A, B)があります。

VH1724GC などの一般的な薪割り機で、エンジンが 160 — 200cc 程度のものの場合、in/out ports は 3/4″ NPT female, work ports は 1/2″ NPT female が標準的な仕様です。

写真の SPEECO(スピーコ)社製バルブもそうですが、ポートマウントと呼ばれる種類のバルブで、シリンダの収縮側のポートにダイレクトに取り付ける構造となっています。(そのため、ブラケット等に固定するためボルト穴などがありません)

まあ、そういう実務的な話はさておき、ここからがキモの話です。

このバルブですが、北米では $50 くらい(6,000 円)で、まあ、米国内送料だの国際送料だの、輸入時の税金だの、なんだかんだでお店では小一万で売っているのですが、値段はさておき、薪割り機用に特別な機能があるのです。

detent(カタカナで書くとデテントでしょうが、発音はディーテンって感じ, auto return ということもあります)というのですが、シリンダを戻す時に、レバーをロックすることができ、シリンダが戻り切ると、自動的に中立に復帰するのです。
この動きを動画で確認してみましょう。
(動画は、往きも帰りも自動のより高機能なオートサイクル バルブを使用しています)

そういう機能の他にも、薪割り機用のバルブには、リリーフバルブも組み込まれています。
3 position, closed center, directional control valve + relier valve にになります。
動画で確認しましょう。

さて、closed center と open center の違いです。
closed center は左記の動画で解説されたとおり、中立位置で全てのポートがブロックされています。
それに対して、open center は、ブロックされていない、よってシリンダに外部から力が加わると、位置を保持できません。
縦横兼用型の場合、縦で使用しているときには、ロッド等の自重が掛かるため、closed center でなければならない、ということが理解できます。動画で確認しましょう。

上の 2 つの動画に出てくるアニメーションの横のシンボル、油圧回路図ですが、以下の動画がわかりやすいと思います。

とまあ、ややこしいことを書いたんですが、つまり、ややこしいんですよ。

その辺に転がっている重機などからもぎ取られたジャンクがどういう仕様なのか、分かる人はわかるんでしょうが、大抵は正確にはわからない。
自作などするもんじゃない、の理由の一つはここにあります。

仕様が明確で、薪割り機用に特化した detect (auto return)機能があるものが 1 万円でお釣りがくるわけです。
じゃあ、パーツを新品で買って組み立てたらいいんじゃないか?

でも、1 万円「も」してしまうんですよ。(米国内なら $50 + 送料、LS-3000 などなら $90 — $110)
自動車のパーツを取ってを修理したことがある人ならわかりますよね。
パーツってのは意外と高いんです。

なので、ジャンク集めや修理が趣味の人なら別ですが、普通の人が自作するくらいなら、まだ、まともに見えるチャイニーズ品を買うほうがマシです。
壊れたところから、まともな部品に置き換えていく、そのほうが一から作るよりもよほど安上がりです。
万一壊れなければ、修理する必要もありませんしね。
大抵壊れると思いますが。。。

続いてポンプです。

VH1724GC では、エンジンから飛び出して、ホースがつながっている、黒い小さな部品がポンプです。

ポンプも実は、薪割り機用に特化した特殊なものがあり、2 ステージポンプといいます。

ちょっと思い出してください。
先程、手動の薪割り機を紹介しましたが、あれにレバーがふたつありましたよね?

あまりに当たり前ですが、空気を押すのに力はほとんどいりませんし、割れてしまったものの繊維が絡まっているので、押し切るようなシーンでは、20 トンだのの力はまったく必要がありません。
そして、力が必要なのは、薪を割る、その瞬間だけです。
でも、このときだけは力が必要なのです。

2 ステージポンプは、いつもは低い圧力でたくさんの油を送り出し、力が必要な瞬間には、圧力を上げることができる、そういう薪割り機というアプリケーションに特化した、とても便利なポンプなのです。

これに対して、重機などのポンプは、圧力・流量ともに一定であるか、流量のみ可変となっています。
要求される特性が全く違うので、重機などのポンプを流用しても、効率的な作業ができないのです。
(これについては、問題を軽減する方法があるのですが、非常にややこしいので、今回は説明しません)

これが自作などするもんじゃない、の理由その 2 です。

ちなみに、薪割り機用の 2 ステージポンプは、米国での価格ですが、安いもので $100 程度、そこそこのもので $150 — $200 程度です。(11 — 13 GPM クラス、エンジンで言うと 6– 8HP クラス)

最後にエンジンです。まあ、これは特に説明は不要だと思いますが。。。

日本国内で流通しているエンジン、特に農機具で使われているものは、減速機が内蔵されていて、一般的に出力が 1,800rpm 程度なのです。

これに対して、油圧ポンプは、大原則として、エンジンにダイレクトにマウントし、3,600rpm で駆動するので、減速なしのエンジンで、かつ、ダイレクトにマウントするためのブラケットがとりつかなければなりません。
米国仕様の場合、各種ブラケットをマウントするための SAE-A, SAE-AA, 4F17 などの規格が存在するのです。
つまり、エンジンと、ポンプとその双方が規格に準じていれば既製品のブラケットでポン付けなのです。

なので、その辺の機械からエンジンをもぎ取り、ブラケットを自作して、素性の分からないポンプを使い、流量固定で、圧力も計ってみたら低かったというようなアホな状態になるくらいなら、きちんとしたものを使ったほうが、よほど安くて安全で確実なのです。

でも、パーツを積み上げるとかなりの額になるんですね。

以下全て米国内の値段ですが…

部品 価格
エンジン GC160 $250
ポンプ $150
バルブ $100
4″ x 24″ シリンダ $150
ホース類 $100
フィッティング類 $100
アクスル $30
タイヤ x 2 $100
合計 $980

といったところです。無論、送料別です。

で、米国産の安い機種 Ariens 22t ですが、これは、送料込みで $1,100 — $1,300 くらいなんですよ。
なので、送料を払うと、完成品のほうが安いわけ。
フレーム等を作る鋼材、薪割り用のウエッジの特殊鋼、シリンダを固定するためのピン、それらは計上してませんから、更に差は広がります。
当然、塗装などのコスト別腹ですしね。

まあ、Airens 22t、米国製でそんなに安いんならお前の店で扱えよ、というツッコミを入れる人が出てきそうなのですがね、扱わないのには理由がありまして。。。
というか、1 台だけ扱いましたが、大赤字になるところだったんですが、このメーカ、梱包がとにかく駄目なので、うちのような規模の小さいところは、混載するために再梱包しなければならず、さらに、半完成品のため、やたらめったらかさばって 1 台でブレイブの薪割り機の 3 台分の運賃がかかるんですよ。
簡単にいえば、運賃が本体の値段ほど掛かる、ということです。

ちょっと脱線しましたが、薪割り機を自作なんてするもんじゃない、というのはそういう理由からです。

というわけで、米国製ブレイブ社の薪割り機は、性能・品質・価格、それらのバランスが優れていると思い、輸入代行を行っています。
どちらも、厳選してチョイスした、とても素晴らしい薪割り機で、自信を持っておすすめしています。
現在、バックオーダーですが、是非ご検討ください。

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