薪の使用量などの考察

Facebook で薪ストーブを新規に導入する方から暖房面積についての質問がありました。
機種について悩まれているようでした。

前々から思っているんですが、薪ストーブのカタログに暖房面積とか、ああいういい加減な数字を書くのは、やめたほうがいいと思うんですよね。
日本でも、沖縄と北海道では全く気候が異なるし、古民家などの古い建物と、今の新築とでは、家の作りも全く別物と言っていいくらいの違いがあるのではないかと思うのです。

エアコンの畳数の表示なんかも全く同じことが言えると思うんですよ。
今年、結局エアコンは取り付けなかったんです。
なもんで、10 年前の、ちょっとガスが抜けた 6 畳用で、48m2 の丸太小屋を冷房したわけです。
ちなみに、小屋裏ロフト付きワンルームです。
吹き抜けは天井の高さは一番低いところで 4m ほど、一番高いところは 8m ほどあります。
ロフトの下部も 3m ほど天井高はあるんです。
一般的なマンション等だと、天井は最近高くなった物件でも精々 2.5m くらいが平均のようですから、場所によっては 3 倍以上の高さがあります。
床面積で言えば、48m2 なので、単純計算したら 26.3 畳(京間)となります。
それを 6 畳用 1 台で冷やせているんです。
6 畳用とは、という感じです。

6 畳用は、冷房能力だと 2.2kW ということになります。
ただまあ、外気温が仮に 35°C として、室内を 27°C にするのなら、たった 8°C の温度差です。
これが 2.2kW の出力でなんとか間に合った、という感じでしょうか。

暖房の場合、外気温が 0°C を 20°C にする場合、20°C の温度差になります。
熱は温度差に比例して逃げますから、暖房能力としては、5.5kW くらい欲しいということになりますね。

結局のところ、最近の家ならば、断熱材をどれくらい入れて、どれくらいの気密性を確保するのか、等々、きちんと説明があると思います。
そうすると、どれくらいの冷房能力や暖房能力が必要か、設計の人がちゃんと計算してくれると思うわけですよ。

それよりも、Facebook でも書いたんですけど、そういう質問をコミュニティに投げてきたということは、数千万の買い物をするのにお客さんに売り手がまともに商品の説明をできていないということになりますよね。
少なくともセカンドオピニオンを求めるような質問ではなかったのです。
ということは、設計側の人が薪ストーブに関する知識がほとんどない可能性が高いと思うんです。
これは恐ろしいことです。

例えば、上の例で 5.5kW と書きましたけど、ぎりぎりだとアレなので、少し余裕を見ていわゆる中型の薪ストーブ、うちだと TrueNorth TN20 ですけど、この場合、13,900 — 29,200BTU なので 4.1 — 8.6kWh の出力になりますが、薪自体、1kg あたり、ちゃんと乾燥したものだと、4.6kWh くらいのエネルギーを持っていて、薪ストーブの効率は 70 — 90% くらいで幅があるんですが、80% だとすると、5.5kWh の熱エネルギーを得るには、1 時間に 1.5kg の薪を消費する、ってことになります。
一日何時間焚くか、それはライフスタイルにもよるでしょうし、他の暖房も併用するか、ということにも大きく依存するわけですが、8 時間だと、12kg ですから 2 束くらいは使うわけですよ。

えらくふりが長いんですが、ここで昨日のクイズの続きになりますが、上の写真の原木ですね、重さがどれくらいでしょうということでしたが、答えは 8,590kg でした。

それで、これを薪に加工するわけですが、どうなるかというと、歩留まりは 50% くらいで、実際には半分の 4.3t 程の薪になります。

一日 12kg 薪を使うと、一月に 360kg ですから、軽トラック 1 台分ですね。
これは 400kg ほどありますが、大体こんな量です。

積み方にもよりますが、相当きっちり積んで 0.8m3 くらい、ざっくり積むと 1m3 くらいになりますが、比重が 0.8 程度あるクヌギ・ナラの場合で、大抵の広葉樹はこれよりもずいぶん軽く、スギやヒノキに至っては、比重が 0.4 程度ですので、同じ量なら半分の重さしかありません。

地方により、ライフスタイルにより、焚く時間や量が変わりますが、かなりの量の薪を使うわけです。

薪は割ってすぐに使えるわけではなく、乾燥に数ヶ月から 1 年以上の時間を必要とし、よく年の寒さなんて予想できませんので、最低でも 1 年、あわよくば 2 年程度のストックを持っているのが理想的です。
そして、2 年分となると、写真の量くらいの原木を薪にする作業をしないといけないということになります。
針葉樹なら写真の倍の量ということになります。
ということは、それだけの原木を自宅なり作業スペースなりに持ってきて、それを玉切りして、薪割りして、薪だなに収納する等して乾燥させ、最終的には薪ストーブの前にまで運び込む必要があるということです。

無論、薪を購入することもできるわけですが、薪の搬入の動線というのはとても重要です。
動線が悪いと手間がかかります。手間がかかるということは、人に頼んだらコストが嵩むということです。
この動線というのは、薪棚からストーブくらいにまで思いを致す人はまあ、普通でしょうが、薪棚までどうするのか、という部分は意外と見落としがちです。
段差があるのとないのとでは、全く大変さが変わりますし、トラックが横付けできるのと延々 1m もない細い路地の奥にストック場所があるのとでは、ものすごく手間の差になることは容易に想像できるかと思います。

ざっくりとした感じではありますが、暖房にどれくらいの熱出力が必要か、それにはどれくらいの薪が必要か、そして、その薪はどれほどの原木が必要で、どれくらいのスペースが必要になるか、参考になればと思います。

まとめます。

  • 薪ストーブなどのカタログに書いてある暖房面積というのはほとんど無意味で参考にならない
  • 家の断熱性能や気候等により、およその暖房に必要な熱出力をまず最初に特定するべき
  • 熱出力がわかれば、およその薪の使用量が計算できる
  • 薪の使用量が計算できれば、薪の保管のスペース等の設計ができる
  • 薪の保管スペースから薪ストーブへの搬入同線も大事だけど、それ以上に、保管スペースへの薪や原木の搬入についても考慮しておく必要がある(原木の方が大きく重たいため)
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