玉切り・薪割り・雨除けをすると、薪は乾燥が遅くなります!?

嘘付くなと叱られそうですが、そういう結果になっているんですよ。(重松の英語力ではそう読める)
アイルランドでの薪の乾燥についての実験です。

10 種類の比較対象を 3 組用意し、それらが乾燥していく様子を追跡調査するというもので、かなり端折って結果だけ書くと、表題の通り、最も早く乾燥したのは、原木をそのまま転がしていたもの、という冗談みたいな結果に終わっているのです。

出典 http://www.forestenergy.ie/

最終的な結果ですが、Treatment # 順で書けば、乾いているのは、9. 300R-NC, 10. 300R-C なんです。

でも、文字上だとこういうことを主張しています。

Not only have changes in moisture content become evident, but a strong treatment effect is apparent also.
Split assortments have displayed consistently lower moisture content than other treatments since late June.
In addition, the covered treatments gained less moisture during wet periods than the uncovered treatments.
On average, the covered treatments increased their moisture content by less than 1% during wet weather conditions,
whilst uncovered treatment increased by 3.2% during the same periods.

要約すると、割ると乾く、カバーをすると乾く。
でも実際のグラフはそうじゃないものもあるんですよね、天邪鬼的に見れば。
実際、割らない、切らない、それが一番早く乾いているのです。

ここからは自分の勝手な推測ですが、日本の同様の試験 と大きく結果が異なっているのは、ネット状のバッグにきれいに詰めたことによるものと思います。

いつもいっていることですが、薪は積むと乾きません。

日に当てても、あまり意味はありませんし、自由水が抜けているタイミングでは雨よけも意味はありません。

風通しで乾く、ということが証明されているのではないか、そのように思うんです。

原木を長いまま積んでいるので、一番隙間率が大きくなっている、その結果、風通しがもっとよく、結果よく乾いた、ということではないのでしょうか?

ネット状のバッグにきれいに積めるにしても井桁に積む、ランダムにコンベアなどで落とし込む、と言うものと比較すれば、また違った結果になったと思いますし、シート(カバー)も遮光するものではなく、光を通すものであれば、多少の差は出たかもしれません。

トマトハウス式カバーを掛けたらどうであったか、というのもとても興味深く思います。

それとおもしろ記述がありました。

Bulk Volume and Firewood Storage Requirements

Bulk volume/solid volume conversion factors were computed to determine the storage requirements of each treatment.

Treatments 1, 2, 5 and 6 which were round assortments had a lower bulk volume/solid volume conversion factor than treatments 3, 4, 7 and 8 which were split assortments. This indicates that the split assortments require more space for storage than round assortments, approximately 20.6% more space.

split assortments=割った薪と、round assortments=玉切りしただけの丸のままの玉との容積比率ですが、これを bulk volume(積んだ時の容積)/solid volume(隙間を取り除いた詰まっている容積)の conversion factor 変換比率ですが、割ると平均 20.6% 増えた、ということです。

無論、玉の長さの影響を受けるし、樹種による影響も無視できない(さけるチーズ的割れ方をするもの、曲がりやねじれが生じやすいもの、etc)、割のサイズの影響も大きいとは思うのですが、一つの目安として、スプルースのような真っ直ぐな木で、かつ、10cm 以下は 1/2, それ以上は 1/4 に割った場合で、2 割は増えるよということで、今までどれくらい増えるのか、ということは意識したことがなかったので、とても参考になりました。

出典 http://www.forestenergy.ie

また、歩留まりについても、自分的には 9 割以上と見ていたんですが、実際にコロ薪を弾いた場合、最も低いケースでは 7 割程度にまで落ち込んでいます。

グラフから推測すると、現状の 33cm という長さでの生産の場合、25% 程度のロスが発生している可能性がありますので、生産コスト(原材料費)の見直しが必要かもしれません。