先日問い合わせのあった Brave(ブレイブ)薪割り機 VH1724GX の件の続きです。
この中で、
MOR8 = SAE 8 かどうかは確証がありません。
と書きましたが、その件も含めて、簡単にまとめておきます。
まず、米国製薪割り機で使われている管用ネジですが、大きく分けて、次の 3 種類になります。
NPT
SAE O-Ring (ORB)
JIC (AN)
NPT から説明します。
NPT ネジは、アメリカの管用ネジです。
管用ネジには、基本的に大きく分けると、テーパーネジと、平行(ストレート)ネジがあります。
NPT は National pipe taper の略 で、要するにテーパーネジということになります。
テーパーネジは、要するにテーパー、つまり、たけのこのように根本が太く先端に行くに従って細くなる形状のネジですね。
それに対して平行ネジは、先端も根本も太さが同じ、つまり、並行でありストレートなネジ、というわけで、まあ、名前のとおりです。
管用テーパネジは締め付けることにより、オスネジとメスネジがガッチリとかみ合うので密閉性が高く、通常はこのネジが使われます。
一方、管用平行ネジは、普通のボルトとナットと同じで、突き当たるまでするすると回りますから、それ自体に密閉性はなく、パッキン等を用いて密閉するわけです。
ネットで検索すればより丁寧な解説がいくらでも見つかると思いますので、割愛します。
それで、テーパーネジから漏れる場合どうするのかという話なんですが、基本的には増し締めすることになります。
ただ、NPT って今はほとんどそういうことはないのですが、規格としては、歴史的な背景もあって「漏れやすい」ネジであるようです。
あと、とても興味深い tweet を見たので、紹介します。
とてもマニアックな話なんですが。。。
シールテープの巻き方から始まった話が、管用ネジの歴史的な変遷に発展していきます。
https://twitter.com/rei_software/status/1575267993462140928
詳しい話は一連の tweet を見て貰えばと思いますが、どうして NPT が漏れやすいのかという部分について、つまり、なんでネジの溝にシールテープを紐状にして巻き付けているのか、ということについて説明されています。
でも、日本国内は基本的に BSPT(R/Rc, 旧 PT)なので、はっきり言って、溝にシールテープをねじ込む必要なんてないし、シールテープってある程度幅があってネジサイズによってはシールテープの幅の方が太いくらいですから、そもそも 1/2 ずらしつつ巻くなんて芸当は不可能なんですけどね。
実際のところ、NPT でもシールテープをちょっと多め、3 — 4 回ほど巻いてやれば(短期的には)漏れたことはないんですが。
ブレイブ(Brave)の 20t は NPT だけで、かなりの数組み立て、動作確認をしたんですけど、流石に何年も使っているわけではないので、時間が経ったのちにもれないのか、ということまでは追いきれていない部分ではあります。
なんで NPT が BSPT(R/Rc)よりも漏れる可能性が高いのか、という部分については、BSPT のネジの形状と、NPT のネジの形状の違いにあるようです。
BSPT, 要するにウィットネジというのは、ネジ山の角度が 55° で山が丸く、谷も丸い。
https://twitter.com/rei_software/status/1575628983152316416
ところがメリケンは、55° なんてめんどい、丸くするのもめんどいから山の頂点を削って平にしたんでいいんじゃない?、みたいな手抜きを始めて、結果出来上がってきたのが NPT ということのようです。
この手抜きによって生じてしまったのが、スパイラル状の連続した空間であり、これが漏れる原因に。
その対策がこちら。
https://twitter.com/rei_software/status/1575810638416211968
とまあ、こういうわけでして、結論を手短に書くと、国内で普通に流通している R/Rc については、シールテープを 2 回も巻けばもれません。
NPT でも最近のものは精度が悪くないので、流石に麻縄をねじ込むまでしなくても、シールテープをちょっと余分に、3 — 4 回も巻けばもれません、多分。
ただまあ、確実に漏れなくしたいならケミカル使った方がいいかなとも思いました。
少なくともシールテープよりは原理的に効果が高いと思いますし。
結構お高いです。。。
まずは増し締めして、漏れるようなら、シールをやり直すかありません。
ケミカルは高いので、通常はシールテープを使います。
自分が思う巻き方ですが、油が漏れて締め直す場合、
古いシールテープやシール材が残っていると思うので、ネジ山をよく清掃する
最初の 1 山程度、シールテープがかからないようにする
シールテープは外巻きで巻く
引きちぎってある場合、ハサミ等で綺麗にカットする
最初の一周はネジ山に指でテープを押し当てる
向きを調整する必要がある場合は、少し余分めに巻いておいく(4, 5 回)
締め付けた後、絶対に緩めない(万一緩んだら、最初からやり直す)
といったところでしょうか。
ケミカルだとこんな感じです。
VIDEO
これは、乾かす必要のないタイプみたいです。
テープが苦手な場合、ケミカルを使ってもいいかもしれませんけど、正直、値段が高すぎるので、テープの巻き方を練習したほうがあとあとのことを考えると良いのではないかと思います。
テープならその辺のホームセンターに確実に置いてありますから。
次に、残りの 2 種類のネジ、SAE O-Ring と JIC についてです。
このネジ、どちらもいわゆる Unify(ユニファイ)ですが、ユニファイネジには、UNF と UNC があります。
F は Fine, C は Coarse で、日本語だとそれぞれ細目, 荒目となります。
ねじ山自体は同じで、平行ネジです。
平行ネジは、ねじ山で圧油を封止することができません。
そのため、SAE O-Ring は O リングで、JIC についてはシート面(シール面)が封止する役割を担います。
少し話が戻りますが、SAE O-Ring が MOR と同じか、と言う件ですが、
Mor is what most people call male oring
と言うふうに教えてもらいました。
MOR-8, 8MOR でわかることは、O リングのおネジ、それ以上でもそれ以下でもないんですね。
つまり、ユニファイかどうかもわからないわけですが、一般的には、
3/4-16
つまり、UNF であって、ORB を指すようです。
今回の VH1724GX のポートマウント用ですが、実際に作業した記憶からもパーツの写真からも SAE ORB で、そして、Straight SAE ORB ではなくて、Adustable SAE ORB でした。
コントロールバルブと取り付ける向きが調整しやすいからですね。
あと、ORB 意外に ORFS もあります。
それぞれ、O-Ring Boss, O-Ring Face Seal の名前の通り、シールの位置が違い、ORB はネジの根元、ORFS は先端にシールがあります。
自分の経験では、今のところ、ORFS を使用している薪割り機を見たことがありません。
JIC ですが、これは O リングではなく、シート面、そろばんの珠のように斜めのすり鉢状の凹凸部分を噛み合わせて圧油を封止する仕組みです。
O リングはゴムなどのパッキン部材がとりつけてありますが、こちらはパッキンに当たる部材がありません。
実物の写真はこんな感じですね。
なぜかシールテープが巻かれていますね。
JIC も SAE O-Ring と同じで、平行ネジですから、テープを巻いてはいけません。
NPT, R といったテーパーおねじの番号が判明しました。
以下にまとめておきます。
呼び方
口金
番号
R (PT)
JIS B 8363 管用テーパーおねじ
1001
NPT-M
アメリカ管用テーパーおねじ
6012
オカダ(アイヨン)
JIS B8463 管用平行めねじメスシート
1004
ニューマ
SAE 37° ユニファイめねじメスシート
6013
東空・古河
JIS B8363 管用平行めねじオスシート
1005
日本国内で、ホース屋さん(横浜)でホースを作ってもらう場合、参考になるかと思います。
とりあえず、急ぎでまとめたので、写真・図等少なくてわかりづらいかと思いますが、作業してわからないことがありましたら、お問い合わせください。