針葉樹の薪は売れるのか!?

台風は今のところ大した被害は確認できていません。
薪にかけてあったシート類なども無事でした。
ほっと一安心です。

さて、針葉樹の薪は売れるのか、ということについてです。

何件かの薪屋さんを訪問・見学させていただいた時に、針葉樹の薪は売れるのか、ということを聞いてみたことがあります。

答えは、「全く売れない」ということでした。

薪屋、つまり、薪を製造する立場から針葉樹の薪について見てみると、正直、針葉樹の薪を作るメリットは皆無と言っても過言ではありません。

例えば、クヌギの比重は、0.85 くらい、コナラはそれより 5% 軽くて、0.8 くらいといわれていますが、これに対して、ヒノキは 0.41、スギ 0.38 くらいという具合で、概ね半分くらいです。

ということは、同じ重量(=同じ熱量)を得るためには、倍の薪を作る必要がある、つまり、倍の回数切断し、倍の回数薪割りをし、倍のスペースが乾燥保管に必要、ということになります。

薪製造機で作業をする場合、よほど太くて下処理をしなければならないような状態のものは別ですが、それ以外ものは、クヌギであっても、ヒノキであっても、基本的にワンサイクルの処理時間はそれほど差がでません。

無論、堅いクヌギのほうがチェンソーでの切断時間がかかるのは事実でしょうし、節などがあって薪割り速度が低下する確率もクヌギのほうが高いですが、だからといって、倍半分ほど違うか、というとやってみないとわかりませんが、あまり差はないと思います。

下手をすると、針葉樹の場合は、真っ直ぐなので、ロードはしやすいかもしれませんが、枝を幹のすぐのところで落としていないと、材を送るときに不都合が生じる可能性があって、間伐材など、どの程度そういう作業がなされているのか、適切に枝が払われていないと、その手間分、処理に時間がかかる可能性も否定できません。

しかも、売価は、たとえ重量で売るとしても、クヌギとヒノキとでは、同じ単価、というわけにはなりません。

そう考えると、同じ重量を加工するのに、2 倍に近いコストがかかり、その後の乾燥も、体積が倍あるわけですから、スペース・容器(メッシュパレット等)のコストも 2 倍かかるのに、売上は 2/3 とか、そういう状態になってしまうわけです。

ですが、この前配達に来てくれた時に、おじさんが「ひのきの間伐材を買って欲しい」といっていたんです。

上記事情を説明して一旦断りはしたんですが、山でそのまま腐らせるのは勿体無いし、クヌギの山の状態が長雨続きで足元が悪くて、そうこうしているうちにすっかり暑くなって、続きは秋にしましょう、ということになったんで、この冬に使える薪を作るには、乾燥が早い針葉樹を作っておいて、多少は売り物を用意しておいたほうがいいのかな、とも思ったんです。

長野などは、長野の事情があるのでしょうが、DLD さんが 針葉樹にこだわって薪を生産 しています。

愛媛という土地柄からすれば、スギ・ヒノキ薪の販売価格としては 1t あたり 3 万程度がどう考えても上限であろうと思います。

1m3 あたりの加工は現在のペースだと約 2 時間必要であるので、1,500 円/h とすれば、3,000 円が人件費、経費としては、通常、人件費の 2 倍以上かかるので、6,000 円程度が加工費と推測され、比重を 0.4 から逆算すると 1t あたりロスが出なくて 15,000 円かかることになりますが、実際には、乾燥による収縮やロスなどで 80% くらいの歩留まりなので、18,750 円位はかかるわけです。販売経費は 1〜2 割程度はかかるので、原木代として残るのは、5,000 円程度なのですが、生木は水を含んでいるため乾燥後、しかも製品となったものの重量として 1t あたり 5,000 円なので、採算は取れそうにもありません。

とりあえず、倍加工しなければならない、という部分がネックになっているのですが、柔らかくて加工が早くできるようなら採算に合うかもしれませんし、機械を遊ばせても仕方がないので、やるだけやってみて、様子を見てみようと思います。