薪割り機のエンジン載せ替えについての問い合わせ

薪割り機のエンジン載せ替えについて問い合わせがありました。
エンジン不調の場合、載せ替えを検討する方もいると思うので、記事にしておきます。

基本的に、自分は米国製の薪割り機の事情はある程度分かりますが、国産やチャイニーズ品については、あまり詳しくありません。
あくまでも米国での一般的な薪割り機についての情報となります。

まず、米国以外の国の場合、日本も含めて、メートル法(metric)になりますが、米国の場合ヤードポンド法(imperial)になります。
なので、エンジンも HONDA であっても、米国向けのものは、日本国内で流通しているものとは、PTO シャフトであるとか、エンジンのブラケット取り付け部の規格が 全く異なる ので、事実上別物です。

HONDA GC160 が乗っているので、GX200 に載せられますか、という質問だったのですが、これが GX160 が乗っているんですが、だったら、回答に困るところでしたが、GC160 って、国内ではほぼ流通してなくて、多分ですが、米国製の薪割り機なんだと思います。
GX は、バリエーションが多すぎるので割愛しますが。

それで、GC の場合、以下の 3 種類の PTO があります。



当然ですが、これがなんなのか、というのが重要です。

あと、GC に関しては全て減速なしなんですが、農機具なんかからもぎ取った汎用エンジンは高い確率で減速機が内蔵されているので、回転数が 1,800rpm MAX になります。
米国製の薪割り機は、3,600rpm が定格のポンプを使っていることが多いし、当然ですが、シャフトが適合しないので、直結することできず、プーリー等を使い増速した上で、ポンプの軸に荷重がかからない(特にラジアル荷重)ようにすることが重要です。

また、減速なしの 3,600rpm だっとしても、マウントブラケットがそのまま使えるのか、というとちょっと微妙なケースが多いんじゃないかと思います。
米国製の薪割り機の場合、このクラスのものは概ね、4F17 というマウントブラケットを使います。

エンジンのマウント部分の B.C., ブラケットの種類、ポンプのマウント形状、これらが一致しないと、きちんと取り付かなかったり、振動が出てポンプが一発で死ぬ原因となります。

なんだかんだで、薪割り機屋さんをそれなりの期間やってきていますが、米国製の機械は米国製ならではの癖というか、特徴があって、チャイニーズ品とは設計というか、スタイルが基本的には異なるので、元の薪割り機がどこ製か、そういう思想で作られているものか、それがわからないとなんとも言えないのです。

米国製に限って言えば、古い例えですが、DOS/V パソコンみたいなもんなんですよ。

エンジンは、まあ、ブランドは違っても、PTO や B.C. は基本同じ、ブラケットは 4F17 で、ポンプは GC160 クラスなら 11GPM のツーステージ型、吸入側は hose barb で、吐出側は 1/2″ NPT-F と相場が決まっているのです。

GC190/GX200 だと、ポンプは大体 13GPM の物を組み合わせることが多いですね。
なので、GC160 から GX200 への載せ替えはちょっとオーバスペックかなと思います。

もしパワー不足等でエンストするようなことがあるのなら、それはリリーフ圧の設定を少し下げるなり、他に見直す点があると思います。

で、載せ替えに話を戻しますと、GC160, GC190, GX160, GX200、この辺りはエンジンのマウントの形状は同じです。
なので、エンジン自体を載せ替えることは、大抵は難しくありません。
ただ、エンジン自体、GC160 から GX200 になると排気量が増える分、一回り大きいのです。

Brave の場合で言えば、PCLS2013GC の場合、型番から分かる通り、このモデルは GC160 しかエンジンバリエーションがないので、GX200 に載せ替えた場合、かなりタイトになります。(実際にうちのものは、GX200 + 13GPM ポンプに載せ替える改造をしています)
VH1724GC の場合、このモデルのエンジンバリエーションは、24t — GC160, 30t — GC190, 36t — GX270(米国仕様)、五十嵐商店向けの 24t — GX160, 30t — GX270 という組み合わせになるんですが、フレームは共通なので、極端な話、GC160 を GX270 に載せ替えることも可能です。
GC160, GX160, GC190, GX200 と GX270 はエンジンの大きさがかなり異なり、エンジンのマウントのサイズも異なるので、どちらにも対応できるようにエンジンマウントには両方の穴が空いているんです。

そういう配慮がない薪割り機のエンジンを大型化する場合、エンジンのマウント位置の調整のため、マウントの加工や、エンジン自体の重量が増加するため、強度等について検討する必要があります。

米国製の場合、フレームが作動油タンクを兼ねているケース(Brave など)では、エンジンマウントの溶接の品質に問題があり、タンクにピンホールやクラックが発生して、作動油がごく少量リークする症状がよくあると感じます。
VH1724GC に関しては、今のところ発生していませんが、主にうちで扱うものが 24t でエンジンが GC160 のため、GX270 搭載可能なブラケットは強度が高く、問題が顕在化しづらいのではないかと思います。

作動油タンクが破損すると、修理はかなり面倒くさいので、エンジンを大型化するなら、ついでにタンクを独立させ、作動油の量も増やすのが良いと思います。
うちの PCLS2013GC は、そういう改造をしています。
当然ですが、フレームはフレームとしての機能しかないため、エンジンマウント部分が破断しても、オイルが漏れることはありません。
単に、エンジンを下ろして、溶接し直せば済みます。

えらく話がずれましたが、エンジンについてですが、

SPECIFICATIONS
Model GX200UT2QX2
Engine Family GX
Power 5.5 HP
Torque 9.1 ft-lbs
Bore/Stroke 68mm/54mm
Disp. 196 cc
Speed 3600 RPM
Start Recoil
Fuel Tank 3.3 quarts
Shaft Horizontal
Shaft 3/4″ dia. x 2-7/16″ keyed, tapped 5/16″-24 UNF
Base Mount Four hole on 3.1″ x 6.378″ centers
Accessory Mount 4 bolt on 3-5/8″ B.C.
Size 11-3/4″ X 15″ X 13-1/2″

という感じでして、自分で言うのもなんなんですけど、こんないつ売れるかもわからないような特殊なエンジンをよく在庫しているもんだと感心します。

ポイントとしては、

Speed 3600 RPM

これは、回転数ですが、3,600rpm であること。
重要です。

Shaft 3/4″ dia. x 2-7/16″ keyed, tapped 5/16″-24 UNF

PTO の出力軸、シャフトの情報ですが、直径が 3/4″ で、キーが 2-7/16″, ネジが 5/16″ – 24 UNF です。
いわゆる Q type になります。

Accessory Mount 4 bolt on 3-5/8″ B.C.

これが、ブラケット取り付け部の寸法になります。
ブラケットにもいろいろ種類があるのですが、4F17 の場合、大抵、

Engine Mount 3-5/8″ bolt circle

と言うように書いてあります。
これが使用するエンジンに合致しないと取りつけられません。
もちろん、ポンプの形状が 4F17 に合致しないと、ポンプの側が取り付かないことになります。
ポンプ側の形状は、SAE A, SAE AA などがあります。

というわけで、売ってもいない薪割り機のエンジンの載せ替えの問い合わせにいちいち答えるのか。
結構専門的なことなので、対応するのも相当時間がかかります。
某ヤフオクでパーツを売っている方に商品について質問をしたら、「答えて自分になんの得があるのか」という返事をもらったことがありまして、ものすごく残念な気持ちになったのを今でも覚えています。
なので、うちで買わないとしても、まあ、情けは人の為ならずともいいますし、とはいえ同じことを何度も回答したくないので、こうやってわかる範囲のことは公開しておこうと思うのです。

質問される方も、後に続く人に有益になるように、その後ですね、結果どうなったのかと言うようなフィードバックをいただけると嬉しく思います。